中部大学 人文学部研究論集(42) p.85-95(査読有り) 【論文】博物館におけるデジタルゲーム展示の意義と可能性

(最終更新日:

著者:尾鼻 崇、小出 治都子、岡田 翔

理事の尾鼻、小出が「博物館におけるデジタルゲーム展示の意義と可能性」の研究論文を発表しました。

社会の文明化に伴って「最新のもの」を「古くさいもの」へと貶める速度が増すほど、必然的に破損したり役に立たなくなったりした「遺物」が増加する。その結果、「遺物」を受け入れ保存する役割を担う博物館もまた、際限なく拡張/増殖せざるを得なくなる。Lübbeはこのような現象を「進展するミュージアム化」と定義しており、これこそが現在の博物館が迎える最大の危機であると指摘している。産業サイクルが極めて速いデジタルゲームは、Lübbeが指摘するように「遺物」を増殖し、博物館を「進展するミュージアム」へと変貌させる典型例といえる。その意味でデジタルゲームと博物館の関係を考えることはまさに現代的課題といえるだろう。

デジタルゲームを博物館や美術館で展示するという試みは、21世紀以降、急速に増加してきている。博物館学の分類に依拠すると、博物館施設は「総合博物館」、「人文系博物館」、「自然系博物館」の3点に分類されるが、いずれの種類の博物館においても「ゲーム展」は 数多く開催されてきている。デジタルゲームに関する展示が増加したことは、デジタルゲームの地位が産業面のみならず文化的な見地からも向上したこと、そして、デジタルゲームの制作者に対して「作家性」が認められるようになったことに起因していると思われる。例えば、国内におけるゲーム展の代表例として表1で示した展覧会が挙げられる。

表1は、あくまでも博物館法によって定められた博物館(および博物館相当施設)において開催された企画展に限定して整理したものである。このリストを俯瞰するだけでもある程度は理解できるように国内におけるゲーム展の大半が「ゲーム産業の様々なイノベーションを歴史的にまとめる展示」となっている(特定の作家やアーティストを対象とした展覧会はデジタルゲーム展の場合少数に留まるが、ゲームのイラストレーターやグラフィックデザイナーによる原画展は例外であり、開催の機会は多い)。また、デジタルゲーム展開催の背景に目を向けると、その大半は担当者(多くの場合は館専属のキュレーター)の強い意向により開催したものが多い。その結果現在では担当者や当時の資料が行方不明となり、調査不能となった事例も数多くみられる。すなわち国内におけるゲームの企画展は、たとえ大規模な博物館・美術館における催しであったとしても個々人の裁量に頼って開催されているものが大半であり、組織的な基盤を確立しているとは言い難い。

他方で、上記で挙げた「デジタルゲームの歴史的枠組みを包括的に展示した例」の他にも、米沢嘉博記念図書館で開催された「すがやみつる展『ゲームセンターあらし』とホビーマンガ」(2013)、アーツ千代田の「パックマン30周年記念展」(2010)、渋谷ヒカリエの「ドラゴンクエストミュージアム」(2016)、森アーツセンターギャラリー「FINAL FANTASY 30th ANNIVERSARY EXHIBITION ─別れの物語展」(2018)など、特定のタイトルもしくは特定の企業のIntellectual Property (IP)に紐づく展示が近年では活発に開催されている。また,「東京ゲームショウ」をはじめとする最新の未発売タイトルを展示することを目的とした「見本市」も、デジタルゲームの展示の一つの形態として捉えることが可能である。このようにデジタルゲームを博物館で展示する文化財として捉えた場合、その展示を鑑みる上で、より多角的な見地が必要になると考えられる。

以上を踏まえて、本研究では、博物館におけるゲーム展示の状況と展望について、ゲーム所蔵館連携の観点を踏まえつつ検討することを目的とする。

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